とあるお城で生まれた、とても美しい女の子。雪のように白い髪、血のように赤い瞳。
彼女は、白雪姫の生まれ変わりとして育てられてきました。
何かを口にすることも、発言することも。振る舞いも、姿も。
何もかも、姫のようにあれと。
もう一人の白雪姫という人形を編み出すかのように。彼女というものをすべて否定し、強要しました。
彼女も最初は、それを受け入れました。皆が喜んでくれる。その純粋な想いだけで。
時が経つにつれ、彼女はあることに気付きました。
皆は私自身を見てくれていない、ということに。
「なら、私って何だろう?」
自分自身に問い掛けます。
「私は私でいては駄目なの?」
***
それから彼女は、自分らしく振舞うことにしました。
本当は嫌いだった勉強から逃げ、自分の大好きなものを食べ、好きな色の服を着る。
すると、何ということでしょう。
あんなにも笑顔で話してくれたあの人達はいなくなり、家族は愛想を尽かし、彼女を家から追い出しました。
何も知らない森でひとり、知り合いは誰もいない。美しい森の中で、彼女はひとりぽっち。
彼女は笑いました。
「ああ、結局皆は私を通して白雪姫を見ていただけなのね」
あふれ出る涙は、止まりません。
そんな彼女の声も、あの人たちには届きません。とても悲しく、美しい。
今は何者でもない、ひとりぽっちの少女。
そんな彼女の物語。
【END】
水野 ユズ
あなたもジンドゥーで無料ホームページを。 無料新規登録は https://jp.jimdo.com から