第一幕 白雪姫と呼ばれていた少女のお話

とあるお城で生まれた、とても美しい女の子。雪のように白い髪、血のように赤い瞳。

彼女は、白雪姫の生まれ変わりとして育てられてきました。

何かを口にすることも、発言することも。振る舞いも、姿も。

何もかも、姫のようにあれと。

 

もう一人の白雪姫という人形を編み出すかのように。彼女というものをすべて否定し、強要しました。

彼女も最初は、それを受け入れました。皆が喜んでくれる。その純粋な想いだけで。

 

時が経つにつれ、彼女はあることに気付きました。

皆は私自身を見てくれていない、ということに。

 

「なら、私って何だろう?」

 

自分自身に問い掛けます。

 

「私は私でいては駄目なの?」

 

 

***

 

 

それから彼女は、自分らしく振舞うことにしました。

本当は嫌いだった勉強から逃げ、自分の大好きなものを食べ、好きな色の服を着る。

 

すると、何ということでしょう。

あんなにも笑顔で話してくれたあの人達はいなくなり、家族は愛想を尽かし、彼女を家から追い出しました。

何も知らない森でひとり、知り合いは誰もいない。美しい森の中で、彼女はひとりぽっち。

 

彼女は笑いました。

 

「ああ、結局皆は私を通して白雪姫を見ていただけなのね」

 

あふれ出る涙は、止まりません。

そんな彼女の声も、あの人たちには届きません。とても悲しく、美しい。

今は何者でもない、ひとりぽっちの少女。

 

 

そんな彼女の物語。

 

 

【END】